読了時間の目安約 6 分2,806 字
お金の勉強 第 3 回 / 対話
「結局どれを買えばいいのか」。おそらく、あなたが最初に聞きたかった質問はこれだろう。
第 3 回は商品選び。見る数字は 3 つしかない。そして、そのうち意味があるのは実質 1 つである。
結論
見るのは ①信託報酬 ②純資産総額 ③連動する指数 の 3 つだけ。このうち事前に確定しているのは信託報酬だけなので、そこから決める。「過去の成績が良い」は選ぶ理由にならない。同じ指数に連動するなら中身はほぼ同じで、差がつくのはコストである。
先生、ずっと聞きたかったんですけど。結局どれを買えばいいんですか?
ようやく本題だな。待っていた。……いや、待たせていたのは私か。先に一つ確認させてくれ。あなたはいま、何を基準に選ぼうとしている。
えっと……過去の成績が良いものを、と思ってました。
……そこか。責めているわけではない。ほとんどの人がそこから入る。ただ、それは一番当てにならない選び方だ。
えっ。ランキングとかよく見ますけど。
過去に上がったという事実は、これから上がる理由にならない。むしろ過去に上がったものは、その分すでに高く買うことになる。ランキングは「よく売れた順」であって「これから儲かる順」ではない。
目次
見るべき数字は 3 つ


じゃあ何を見ればいいんですか。
3 つだ。信託報酬、純資産総額、連動する指数。それ以外は基本的に見なくていい。
一番大事なのは信託報酬だ。理由は単純で、将来のリターンは誰にも分からないが、コストだけは契約時点で確定しているからだ。
たしかに、それはそうですね。
同じ指数に連動するファンドなら、中に入っている株はほとんど同じだ。中身が同じなら、安いほうが構造的に有利になる。これは好みの問題ではなく算数の問題だ。
純資産総額というのは?
そのファンドにどれだけお金が集まっているかだ。規模が小さすぎると、運用が続けられなくなって途中で終わることがある。繰上償還という。
終わったらどうなるんですか?
強制的に清算される。そのときの価格が高いか安いかは選べない。長期で持つつもりなら、これは避けたいリスクだ。
なるほど。じゃあ大きいほど良い?
「安心して持ち続けられる」という意味ではそうだ。ただし——ここは何度でも言うが——人気があることと成績が良いことは別だ。私もこれを混同していた時期がある。
全世界か、米国か
指数のところなんですけど、オルカンと S&P500 でいつも迷います。
その質問で迷える人は多い。安心しろ、正解がないから迷うのであって、あなたの理解力の問題ではない。ただし考え方は変えたほうがいい。「どちらが儲かるか」ではなく、どちらなら判断を放棄できるかで見るんだ。
判断を放棄……?
全世界株式は、どの国に投資するかの判断まで市場に任せる商品だ。米国株式は「今後も米国が中心である」という前提をあなたが引き受ける商品だ。
その前提が外れたら?
判断し直す必要が出てくる。つまり考えることが増える。全世界を選べば、その場面が原則として来ない。
どっちが正解なんでしょう。
正解はない。ただ付け加えると、全世界株式にも米国株は大きな比率で入っている。排他的な選択というより、米国以外をどれだけ持つかという程度の問題だ。思っているほど大きな分岐ではない。
ファンドの評価軸信託報酬・純資産・受益者還元型の仕組みについてはeMAXIS Slim はなぜ定番とされるのかで詳しく解説しています。
やりがちな失敗
| やりがちなこと | 何が問題か |
|---|---|
| ランキング上位を買う | 「よく売れた順」であって将来の成績順ではない |
| たくさんの本数に分散する | 中身が重複していれば分散になっていない。管理だけ増える |
| 毎年こまめに乗り換える | 課税口座では売却のたびに課税。NISAでも枠の復活は翌年 |
| テーマ型を選ぶ | 話題になった時点で価格に織り込まれていることが多い |
| 信託報酬を見ずに決める | 唯一事前に確定している要素を無視している |
分散したほうがいいと思って、5 本くらい買おうかと思ってました。
その気持ちは分かる。数が多いほうが安全に見えるからな。だが中身を見たか。全世界株式を 5 本買っても、1 本を 5 回買っているのとほぼ同じだ。
……たしかに。
分散は本数ではなく中身で決まる。全世界株式のインデックスファンド 1 本で、すでに数千銘柄に分散している。そこに同じものを足しても、増えるのは管理の手間だけだ。
今日のまとめ
- 見る数字は 3 つ。信託報酬・純資産総額・連動する指数
- 最も重視すべきは信託報酬。事前に確定している唯一の要素だから
- 過去の成績やランキングは選ぶ理由にならない
- 純資産が小さすぎると繰上償還のリスクがある
- 全世界か米国かは「どこまで自分で判断するか」の違い
- 分散は本数ではなく中身で決まる
思ったよりシンプルでした。もっと難しいと思ってた。
そうだろう。難しくしているのは、たいてい選ばせたい側だ。比較項目が多いほど、判断は主観に寄る。——さて、ここまでは平時の話だ。次は「買ったあとに下がって怖くなったとき」をやる。本当に難しいのはそっちだ。
関連記事
よくある質問
- 投資信託は何を基準に選べばいいですか?
- 信託報酬・純資産総額・連動する指数の3つです。将来のリターンは不確実ですが、信託報酬は契約時点で確定しているため、最も確実に効く判断材料になります。
- ランキング上位のファンドを買えばいいですか?
- ランキングは「よく売れた順」であり、将来の成績を示すものではありません。過去に上がった事実は、これから上がる理由になりません。
- オルカンとS&P500はどちらがいいですか?
- 優劣ではなく、どこまで自分で判断するかの違いです。全世界株式は国の配分も市場に任せ、米国株式は米国の優位が続くという前提を自分で引き受けます。なお全世界株式にも米国株は高い比率で含まれます。
- 投資信託は何本買えばいいですか?
- 分散は本数ではなく中身で決まります。全世界株式のインデックスファンドは1本で数千銘柄に分散しているため、同種のものを複数持っても分散効果は増えません。
本記事は公開情報にもとづく個人の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。制度・手数料・ポイント還元の条件は改定されることがあります。実際のご判断は必ず金融庁・各運用会社・各証券会社の最新の公式情報をご確認のうえ、ご自身の責任でお願いいたします。









コメント