額面と手取りはなぜ違うのか — 給与明細から読み解く社会保険料と税

お金の基礎 01 / 給与の構造

毎月届く書類のうち、最も読まれていないのがおそらく給与明細である。

額面と手取りの差は「引かれている」のではなく、四つの制度が同時に作動した結果である。構造を知れば、少なくとも驚かずに済む。

年収の話をするとき、多くの人は額面で語る。しかし実際に使えるのは手取りである。この二つの差は、年収が上がるほど拡大していく。

差額の正体は四つに分解できる。健康保険料、厚生年金保険料、所得税、住民税である。

目次

額面から手取りに至る流れ

Fig. 額面給与から手取りまで 額面給与(総支給額) 健康保険料 労使折半 厚生年金保険料 労使折半 所得税 今年の所得に課税 住民税 前年の所得に課税 手取り(実際に振り込まれる額) 住民税は前年の所得に対して課される。収入が減った翌年も、前年基準の住民税が請求される点に注意。
控除される四項目。性格が異なるため、それぞれ別に理解する必要がある。

社会保険料 — 労使折半という事実

健康保険料と厚生年金保険料は、会社と本人が半分ずつ負担する。明細に記載されているのは本人負担分のみであり、実際には同額を会社が支払っている。

つまり会社から見た人件費は、額面よりさらに大きい。転職や独立を検討する際、この見えない負担を計算に入れないと判断を誤る。国民健康保険と国民年金は全額自己負担となるためだ。

所得税 — 今年の所得に対して課される

所得税は当年の所得に対して課され、毎月の給与から概算で天引きされる。年末調整はこの概算と確定額の差を精算する手続きである。

住民税 — 前年の所得に対して課される

ここが最も見落とされやすい。住民税は前年の所得を基準に計算され、翌年 6 月から翌々年 5 月にかけて徴収される。

制度上、最も注意すべき点収入が大きく減った年、あるいは退職した年の翌年も、前年の高い所得を基準にした住民税が請求される。新社会人の 2 年目に手取りが減ったように感じるのも、住民税の徴収が始まるためである。

年収が上がっても手取りは比例して増えない

日本の所得税は累進課税であり、所得が増えるほど高い税率が適用される。加えて社会保険料も報酬に応じて増える。

昇給の知らせに喜べる期間は、明細を見るまでの数週間しかない。

もっとも、社会保険料には上限が設けられており、一定の報酬を超えると保険料は増えなくなる。この構造まで含めると、「年収いくらで手取りがどう変わるか」は単純な比例ではない。

家計設計への応用

  1. 額面ではなく手取りで予算を組む生活費も積立額も、手取りを基準に設計する。額面で計算すると常に足りなくなる。
  2. 賞与を計算に入れない賞与は業績により変動し、社会保険料も課される。固定費や積立の前提に組み込むと、支給額が減った年に破綻する。
  3. 退職・転職の年は住民税を別枠で確保する前年基準の住民税は、収入が途切れても請求される。転職の空白期間がある場合はとくに、この分を現金で確保しておく。

よくある質問

額面と手取りの差は何ですか?
健康保険料・厚生年金保険料・所得税・住民税の四項目です。このほか雇用保険料や、会社によっては組合費・財形貯蓄などが差し引かれる場合があります。
住民税はなぜ前年の所得で計算されるのですか?
住民税は前年 1 月から 12 月の所得を基準に税額が決まり、翌年 6 月から徴収が始まる仕組みだからです。このため収入が減った翌年も、前年基準の税額が請求されます。
社会保険料は会社も払っているのですか?
健康保険料と厚生年金保険料は労使折半です。給与明細に記載されているのは本人負担分のみで、同額を会社が負担しています。
新社会人 2 年目に手取りが減るのはなぜですか?
住民税の徴収が始まるためです。1 年目は前年の所得がないため住民税がかからず、2 年目の 6 月から課税が始まります。

本記事は公開情報にもとづく個人の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。制度・手数料・ポイント還元の条件は改定されることがあります。実際のご判断は必ず金融庁・各運用会社・各証券会社の最新の公式情報をご確認のうえ、ご自身の責任でお願いいたします。

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