平均貯蓄額という数字は、人を安心させるためにも不安にさせるためにも使える。だから頻繁に引用される。
平均値と中央値の差を理解することは、家計に限らず、あらゆる統計を読むうえでの最低条件である。
「20 代の平均貯蓄額は 121 万円」という数字を見て、自分は平均以下だと感じた経験はないだろうか。
しかし同じ調査で、中央値は 9 万円とされている。この二つの数字は同じ集団を指しているにもかかわらず、10 倍以上の開きがある。
なぜこれほど乖離するのか
平均値は全員の金額を合計して人数で割る。したがって少数の極端に大きい値に引きずられる。
中央値は、全員を金額順に並べたときちょうど真ん中に来る人の値である。極端な値の影響を受けにくいため、「典型的な人」の姿を示すのはこちらだ。
「保有していない世帯」の存在
もう一つ見落とされやすいのが、金融資産を保有していない世帯の比率である。20 代の単身世帯では約 4 割が金融資産を保有していないとされる。
この層を含めて計算した中央値が 9 万円である。つまり中央値の低さは、少額しか持っていない人が多いというより、そもそも持っていない層が相当数存在することを反映している。
では、どの数字を見ればよいのか
他人の平均値と比べて安心したり落ち込んだりする時間があるなら、自分の生活費の何か月分あるかを数えたほうが早い。
家計の健全性を測るなら、絶対額より生活費に対する比率のほうが意味を持つ。生活費 20 万円の人の 100 万円と、生活費 40 万円の人の 100 万円は、まったく違う意味を持つ。
| 指標 | 見るべき理由 |
|---|---|
| 生活費の何か月分か | 失業や疾病に何か月耐えられるかを示す |
| 毎月の貯蓄率(貯蓄額 ÷ 手取り) | 絶対額より、家計の構造を反映する |
| 固定費の比率 | 削減余地の有無を示す。可変費より優先して見るべき指標 |
| 1 年前との差 | 他人ではなく過去の自分と比較する。唯一意味のある比較対象 |
統計を読むときの三原則
- 平均値が出てきたら中央値を探す——両方が示されていない統計は、実態を伝える意図が薄い
- 母集団を確認する——誰を対象にした調査か。金融機関の利用者調査なら、一般より高めに出る
- 「持っていない層」が含まれているか確認する——除外されていれば、数字は当然高くなる
この三点は貯蓄額に限らず、年収・投資額・労働時間など、あらゆる家計統計に共通して適用できる。
関連記事
よくある質問
- 平均値と中央値はどう違いますか?
- 平均値は全員の合計を人数で割った値で、極端に大きい値に引きずられます。中央値は金額順に並べた際の真ん中の値で、極端な値の影響を受けにくいため、典型的な姿を示すのは中央値です。
- 20代の貯蓄額の平均と中央値はいくらですか?
- 各種調査によれば、20 代単身世帯では平均 121 万円、中央値 9 万円とされています。10 倍以上の差は、少数の高額保有層と、金融資産を保有していない世帯が約 4 割存在することによります。
- 貯蓄額は何を基準に判断すればよいですか?
- 絶対額よりも、生活費の何か月分に相当するかで判断するのが実務的です。生活費の水準は人により異なるため、同じ金額でも意味が変わります。
- 平均貯蓄額より少ないと問題がありますか?
- 平均値は分布の歪みにより実態より高く出ます。比較すべきは他人の平均ではなく、自分の生活費に対する比率と、過去の自分との差です。
出典
- 金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」にもとづく各種集計
本記事は公開情報にもとづく個人の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。制度・手数料・ポイント還元の条件は改定されることがあります。実際のご判断は必ず金融庁・各運用会社・各証券会社の最新の公式情報をご確認のうえ、ご自身の責任でお願いいたします。
コメント