【番外編】為替介入と高市政権 — このままS&P500を持ち続けていいの?【お金の勉強】

【番外編】為替介入と高市政権 — このままS&P500を持ち続けていいの?【お金の勉強】

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お金の勉強 / 番外編

S&P500 は上がっている。それでも円建ての評価額は減っている。

15 年ぶりの協調介入、高市政権の積極財政、そして「持ち続けていいのか」。為替という、選んだ覚えのないリスクの話をします。

結論

持ち続けていい。ただし「S&P500が強いから」という理由ではない。円建てで米国株を持つということは、「指数」と「ドル」の 2 つに同時に賭けているということだ。7 月 31 日の15 年ぶりの日米協調介入で円は 164 円台から 156 円台へ動き、指数が 1 ポイントも動かなくても円建ての評価額は 4.57% 減った。ただし同時に、同じ 5 万円で買えるドル建て資産は 4.79% 増えている。積立中の人は、この両方を同時に受け取っている。だから売る理由にはならない。

第 8 回を公開しました

ロング・ショート・建玉・建値・含み損益・押し目。取引用語を「いつ使うか」の場面ごとに整理しています。株の「ロング」って何? — 取引用語を場面ごとに整理する

このシリーズは、最近 NISA を始めたばかりのわたしが、疑問をそのまま先生にぶつける形で進めます。先生は正確ですが、口は悪いです。

この記事の位置づけ2026 年 8 月 3 日時点の公表情報にもとづく解説です。売買の推奨ではありません。政策に関する記述は市場への影響を説明する目的のもので、特定の政治的立場を支持するものではありません。
先生、まずいです。ニュースで「為替介入」ってやってて、僕の持ってる S&P500 の投資信託、めちゃくちゃ下がってるんですけど。
Claude
落ち着いてください。まず「何が」下がったのかを分けましょう。S&P500 は先週金曜、上がって終わっています。
えっ。じゃあなんで僕の評価額が減ってるんですか。
Claude
円が高くなったからです。あなたが持っているのは「S&P500」ではなく「円で買った S&P500」です。この 2 つは別物です。
……同じじゃないんですか。
Claude
まったく違います。今日はそこだけ分かってもらえれば十分です。
目次

まず、何が起きたのか

2026 年 7 月 31 日、日米両政府が外国為替市場で円買いの協調介入を実施した。

項目内容
何をした日米が協調して円を買い、ドルを売った
何年ぶり日米の協調介入としては 15 年ぶり(2011 年の東日本大震災直後以来)
円買いに限れば約 28 年ぶり(1998 年のアジア通貨危機時以来)
規模日本側で 6〜9 兆円との報道
結果1 ドル 164 円台 → 8 月 3 日には一時 155.23 円
報道内容の整理。介入額の公式発表は月末の実績公表を待つ必要がある。
「介入」って、そもそも何をするんですか。
Claude
政府が自分で為替の売買をします。円が安すぎると思えば、市場で円を買う。今回は日本だけでなくアメリカも一緒に円を買った
アメリカも? なんでアメリカが日本の通貨を買うんですか。
Claude
そこが今回の異例な点です。普通、自国の通貨が安いほうが輸出には有利なので、アメリカがドル安を望むことはあっても、わざわざ協力して円を買うのは珍しい。それだけ「行き過ぎだ」という認識が一致していたということです。

なぜ介入したのか

背景は歴史的な円安である。対ドルの円相場は 7 月下旬に1 ドル=164 円に迫り、およそ 40 年ぶりの安値水準にあった。

円安になると輸入するものの値段が上がる。日本は食料もエネルギーも輸入に頼っているから、円安はそのまま生活費の上昇になる。

株価にとっての円安と、家計にとっての円安は、まったく別の顔をしている。

ここが本題 — 政権の政策と、介入は逆を向いている

政府が円安を止めたいなら、最初から円安にならないようにすればよくないですか?
Claude
その質問は、今日いちばん鋭い。そして答えは「政府は同時に、円安になりやすい政策をとっている」です。
……矛盾してませんか。
Claude
しています。順を追って説明します。

高市早苗政権は「責任ある積極財政」を掲げている。財政運営の中核目標も転換され、四半世紀近く続いたプライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化という目標に代えて、「債務残高対GDP比の安定的な引き下げ」が中核に据えられた。

報道によれば、政権は積極財政と金融緩和の両立を目指している。一方で日銀は利上げ路線を維持しており、両者は協調を模索している状況にある。

なぜそれが円安になるのか

  1. 国が使うお金を増やす——そのために国債をたくさん出す
  2. 金利が上がると利払いが重くなる——だから金利は上げにくい
  3. 日本の金利が低いままだと、米国との金利差が開く
  4. お金は金利の高いほうへ動く——だから円が売られ、ドルが買われる
  5. 結果として円安になる

つまり「積極財政+金利は上げにくい」という組み合わせは、構造的に円安を生みやすい。そしてその円安が行き過ぎて物価高になったので、介入で円安を止めにいった。

アクセルとブレーキを同時に踏んでる感じですね。
Claude
その表現でだいたい合っています。正確には「アクセルは踏み続けたいが、スピードが出すぎたのでブレーキも踏んだ」。
それって続くんですか。
Claude
どちらかを緩めるまで続きます。そして政権が積極財政を掲げている以上、緩めるとしたら金融政策のほう——つまり日銀が利上げに動くかが焦点になる。
日銀が利上げしたら円高になるんですか。
Claude
方向としてはそうです。ただし「いつ、どれだけ」は誰にも分かりません。私にも分かりません。そこは正直に言っておきます。
介入について知っておくべきこと介入は為替の水準を決められません。為替の方向を決めるのは主に日米の金利差で、介入はその流れに一時的に逆らうものです。教科書的には「介入は時間を買う手段であって、トレンドを変える手段ではない」とされます。実際に円安が止まるかどうかは、今後の金融政策次第です。

で、S&P500 はどうなったのか

Fig. 円建ての S&P500 の分解Fig. 円建ての S&P500 の分解|S&P500 が 7,489.72 のまま動かなくても、164 円から 156.5 円への円高だけで円換算の評価額は 4.57% 減る。
S&P500 が 7,489.72 のまま動かなくても、164 円から 156.5 円への円高だけで円換算の評価額は 4.57% 減る。
S&P500 自体は上がってたんですよね?
Claude
7 月 31 日の終値は 7,489.72 で、前日から上げています。アマゾンの決算が good だったからです。
なのに僕の評価額は減ってる。
Claude
計算してみましょう。仮に 7,489.72 ドル分の資産を持っているとします。1 ドル 164 円なら円換算で 122.8 万円
156.5 円だと……117.2 万円
Claude
差は約 5.6 万円、率にして −4.57%。指数は 1 ポイントも下がっていないのに、です。
ひどい話ですね。
Claude
ひどくありません。あなたが最初からそういう商品を買っていただけです。第 7 回で言いましたよね。「米国株を買うということは、株を買うと同時にドルを買うということ」だと。
……言われました。
Claude
今、その意味が体で分かったはずです。それは 4.57% の授業料としては安い。

そして、ここからが大事な話

Fig. 円高がもつ 2 つの顔Fig. 円高がもつ 2 つの顔|保有分は −4.57% 目減りする一方、同じ 5 万円で買えるドル建て資産は +4.79% 増える。
保有分は −4.57% 目減りする一方、同じ 5 万円で買えるドル建て資産は +4.79% 増える。
じゃあ円高のあいだは、積立をやめたほうがいいですか?
Claude
逆です。まったく逆。
え。
Claude
毎月 5 万円を積み立てているとします。1 ドル 164 円のとき、5 万円で買えるのは 304.88 ドル分。156.5 円ならいくらですか。
5 万円 ÷ 156.5 = ……319.49 ドル分。増えてる。
Claude
+4.79% です。円高というのは、ドル建て資産のバーゲンセールでもある。
……あ。持ってる分はマイナスで、これから買う分はプラス。
Claude
それです。まったくその通りです。同じ円高が、保有分と購入分で符号が逆になる。積立を続けている人は、その両方を毎月同時に受け取っています。
なんか、急に落ち着いてきました。
Claude
それでいい。パニックの原因はたいてい「片方しか見ていないこと」です。

じゃあ為替ヘッジをつけるべき?

「為替ヘッジあり」の投資信託にすれば、円高でも損しないんですよね?
Claude
為替の影響は減らせます。ただしタダではありません。ヘッジにはコストがかかり、そのコストは日米の金利差でほぼ決まる。
……いま金利差、開いてるんですよね。
Claude
よく気づきました。だから今はヘッジコストが高い局面です。「円高が怖いからヘッジ」と飛びつくと、年あたりで無視できない費用を払い続けることになる。
じゃあ、しないほうがいい?
Claude
あなたの場合はしなくていい。理由は 2 つ。積立中で購入分のプラスも受け取っていること、そして使うのが何十年も先だということです。

ヘッジの仕組みとコストの正体は「為替ヘッジはあり・なしどちらを選ぶか」で詳しく書いた。

結論 — 持ち続けていい理由

  1. 下がったのは S&P500 ではなく円換算の評価額——指数自体は上げている
  2. 円高は保有分にマイナス、購入分にプラス——積立中なら両方を受け取る
  3. 介入はトレンドを変える手段ではない——水準を決めるのは金利差
  4. 使うのは何十年も先——1 週間の為替でその判断は変わらない
でも、もし円高がずっと続いたらどうするんですか。
Claude
その質問は正しい。だから正直に答えます。円高が長期で続けば、円建ての米国株のリターンは確実に押し下げられます。それは事実です。
え、じゃあやっぱり……。
Claude
ただし、それは「持ち続けるか」の答えにはならない。なぜならあなたはその円高を予測できないからです。
……予測できないなら、動きようがない。
Claude
そうです。予測できないものに対する正しい対応は、「当てにいくこと」ではなく「どちらでも耐えられる形にしておくこと」です。毎月一定額を積み立てるというのは、まさにその形になっている。
……先生、今日はちょっと優しいですね。
Claude
あなたが「売ります」と言わなかったからです。介入のニュースを見て、この 1 週間で解約した人は少なくないと思いますよ。

今日のまとめ

  • 7 月 31 日に15 年ぶりの日米協調介入。円は 164 円台から一時 155 円台へ
  • 円建ての S&P500 は「指数 × 為替」。片方だけ見ると混乱する
  • 指数が動かなくても、164 円→156.5 円で評価額は −4.57%
  • 同じ 5 万円で買えるドル建て資産は +4.79%——積立中なら両方受け取る
  • 高市政権は積極財政と金融緩和の両立を目指し、それは構造的に円安を生みやすい
  • その円安が行き過ぎたので介入した。アクセルとブレーキを同時に踏んでいる状態
  • 介入は時間を買う手段であって、トレンドを変える手段ではない
  • 為替ヘッジはコストが金利差で決まる。金利差が開いている今は高い
  • 持ち続けていい。ただし「2 つに賭けている」自覚は持つこと

為替は、あなたが選んだリスクではなく、ついてきたリスクである。それでも、知ったうえで持っているのと、知らずに持っているのとでは、次に同じことが起きたときの落ち着きがまるで違う。

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よくある質問

為替介入でS&P500の投資信託はどうなりますか?
円高が進むと、円換算の評価額は下がります。1ドル164円から156.5円になった場合、S&P500の指数が変わらなくても円建ての評価額は約4.57%減ります。ただし指数そのものが下がったわけではありません。
円高のとき積立は止めたほうがいいですか?
止める必要はありません。円高では同じ金額で買えるドル建て資産が増えます。毎月5万円の積立なら、1ドル164円のとき304.88ドル分だったものが、156.5円では319.49ドル分になり、約4.79%多く買えます。保有分にはマイナス、購入分にはプラスに働きます。
日米の協調介入は何年ぶりですか?
日米の協調介入としては2011年の東日本大震災直後以来15年ぶり、円買いの協調介入に限れば1998年のアジア通貨危機時以来、約28年ぶりです。日本側の介入規模は6〜9兆円と報じられています。
高市政権の政策はなぜ円安につながるのですか?
高市政権は「責任ある積極財政」を掲げ、積極財政と金融緩和の両立を目指しているとされます。国債発行が増えると金利を上げにくくなり、日本の金利が低いままだと米国との金利差が開きます。資金は金利の高い通貨へ動きやすいため、構造的に円安が生じやすくなります。
為替ヘッジありの投資信託に変えたほうがいいですか?
ヘッジコストは主に日米の金利差で決まるため、金利差が開いている局面ではコストが高くなります。積立を継続中で、資金を使うのが何十年も先であれば、コストを払ってまでヘッジする必要性は高くありません。

出典

  • 日本経済新聞「日米が15年ぶり協調介入、円安阻止で思惑一致 3日に共同声明で調整」
  • 時事通信「日米、円買い協調介入か 28年ぶり、円安阻止へ異例の連携」
  • 日本経済新聞「高市早苗政権、積極財政・金融緩和両立に円安の壁 日銀利上げへ協調模索」
  • S&P500の終値(7,489.72)およびドル円相場はYahoo!ファイナンス等の2026年7月31日〜8月3日時点の公表値
  • 円換算額および積立額の試算は上記の公表値をもとに筆者が計算したもの

本記事は公開情報にもとづく個人の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。制度・手数料・ポイント還元の条件は改定されることがあります。実際のご判断は必ず金融庁・各運用会社・各証券会社の最新の公式情報をご確認のうえ、ご自身の責任でお願いいたします。

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