適正株価より 5% 安い。それを「割安」と呼んでいいのか。
自分で計算した適正株価と市場価格の差を乖離と呼びます。私はこの差が 20% を超えるまで「割安」と呼ばないことにしました。理由は 3 つあります。
株の割安さを測るとき、私は「自分が考える適正株価」と「いま市場が付けている値段」の差を見ています。適正株価が 1,500 円で市場価格が 1,000 円なら、乖離は +50%。この数字が大きいほど、仮説が正しかった場合の上昇余地が大きいことになります。
では乖離が +5% だったらどうか。理屈のうえでは 5% 分だけ安いのだから買ってよさそうに見えます。でも私はこれを割安とは呼びません。要求する最低乖離(安全域)を 20% に置いているからです。
理由 1:仮説そのものが外れる
適正株価は天から降ってくる数字ではありません。「この会社の適正 PER は 15 倍だ」という自分の仮説から逆算しているだけです。その 15 倍が 13 倍だったら、適正株価は 13% 下がります。乖離 +5% はその瞬間に消えます。
つまり乖離が小さいということは、自分の仮説がわずかに外れただけで前提が崩れるということです。20% の余裕は、仮説の誤差を吸収するための幅だと考えています。
理由 2:入力しているデータが粗い
個人が使えるデータには限界があります。予想 EPS はアナリスト予想であることが多く、決算発表ひとつで覆ります。株価そのものも取得タイミングによってずれます。
精密な入力から出た +5% ならまだしも、粗い入力から出た +5% は、誤差と区別がつきません。入力の精度に見合った幅を最初から確保しておく必要があります。
理由 3:NISA では損失を他の利益と相殺できない
私は NISA の成長投資枠を使って現物のみで買っています。この枠内の損失は、他の口座の利益と損益通算できません。繰越控除もできない。つまり負けたら負けたままです。
課税口座なら「損は税金の圧縮に使える」という副次的な効果がありますが、NISA にはそれがない。だからこそ、勝率ではなく損の出にくさを優先して、クッションを厚く取るという設計にしています。
安全域とは「当たったときの利益」ではなく、「外れたときに耐えられる幅」のことだ。
20% が絶対の正解ではない
この数字自体に神秘性はありません。値動きの穏やかな銘柄なら 20% で足りますし、値動きが荒い銘柄ならもっと要ります。私は年率のボラティリティに応じて要求する乖離を引き上げる設計にしています(この話は別のコラムに書きます)。
大事なのは、買う前に「どれだけの余裕があれば買うか」を決めておくことです。銘柄を見てから基準を動かすと、それは基準ではなくなります。
まとめ
- 乖離は「自分の仮説」から生まれた数字であり、仮説が外れれば消える
- データの粗さに見合った幅を、あらかじめ確保しておく
- NISA は損益通算ができないぶん、クッションを厚くする理由がある
- 基準は銘柄を見る前に決めておく。後から動かせば基準ではない
本記事は個人の考えと記録であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。
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