保険を売る側は、あなたがすでに相当手厚い保険に加入していることを、あまり熱心には説明しない。
会社員であれば健康保険と厚生年金に加入済みである。まず給付内容を確認し、そこで賄えない部分だけを民間保険で埋める。順序はそれだけだ。
保険の相談は、たいてい「どの商品に入るか」から始まる。しかし論理的な順序は逆である。
会社員であれば、健康保険と厚生年金にすでに加入している。まず既加入の保障範囲を確認し、そこで賄えない部分だけを民間保険で埋める。これが検討の正しい順序だ。
把握しておくべき三つの制度
① 高額療養費制度 — 医療費には上限がある
医療費が高額になった場合、1 か月あたりの自己負担額には上限が設けられている。年収約 370〜770 万円に相当する区分では、80,100 円 +(総医療費 − 267,000 円)× 1% が上限となる。
たとえば医療費が 100 万円かかっても、窓口負担 30 万円がそのまま自己負担になるわけではない。この制度により、自己負担は 9 万円前後に収まる計算になる。
② 傷病手当金 — 働けない期間の収入補填
会社員が業務外の病気やケガで働けなくなった場合、健康保険から傷病手当金が支給される。支給期間は支給開始日から通算して 1 年 6 か月である。
2022 年 1 月からは通算化され、いったん復職して再び休職した場合、前後の期間を合算して 1 年 6 か月まで受給できる。
③ 遺族年金・障害年金
死亡時には遺族年金が、一定の障害状態になった場合には障害年金が公的年金から支給される。金額は加入状況や家族構成により異なるが、生命保険の必要保障額はこれを差し引いて計算すべきものである。
民間保険で埋めるべき部分
公的制度を把握したうえで、なお不足する部分を特定する。実務的には次のように整理できる。
| リスク | 公的制度の対応 | 民間保険の要否 |
|---|---|---|
| 入院・手術の費用 | 高額療養費制度で上限あり | 貯蓄で賄えるなら優先度は低い |
| 働けない期間の生活費 | 傷病手当金(会社員のみ・通算1年6か月) | 自営業は検討価値が高い |
| 長期にわたり働けない状態 | 障害年金 | 不足額に応じて検討 |
| 扶養家族を残しての死亡 | 遺族年金 | 不足額に応じて検討(掛け捨てが基本) |
| 他人への損害賠償 | 公的制度なし | 自動車保険・個人賠償責任保険は必要性が高い |
貯金で払える金額に保険をかけるのは、手数料を上乗せして自分に払っているのと変わらない。
判断の基準
- 公的制度で賄われる部分を差し引く——必要保障額はここから計算を始める
- 貯蓄で対応可能な金額は保険にしない——保険料には運営コストが含まれるため、期待値では不利になる
- 貯蓄と保険を混ぜない——貯蓄機能付きの保険は、保障・運用・手数料が分離できず比較が困難になる
よくある質問
- 高額療養費制度とは何ですか?
- 1 か月あたりの医療費の自己負担額に上限を設ける公的制度です。年収約 370〜770 万円の区分では、80,100 円に総医療費のうち 267,000 円を超えた分の 1% を加えた額が上限となります。
- 傷病手当金はいつまで受け取れますか?
- 支給開始日から通算して 1 年 6 か月です。2022 年 1 月から通算化され、復職と休職を繰り返した場合も前後の期間を合算して計算されます。
- 自営業でも傷病手当金は受け取れますか?
- 国民健康保険には原則として傷病手当金の制度がありません。このため自営業やフリーランスは、会社員より厚い生活防衛資金を確保しておく必要があります。
- 医療保険は必要ですか?
- 高額療養費制度により医療費の自己負担には上限があるため、その水準を貯蓄で賄えるのであれば優先度は高くありません。必要性は貯蓄額と公的制度の給付内容から判断してください。
本記事は公開情報にもとづく個人の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。制度・手数料・ポイント還元の条件は改定されることがあります。実際のご判断は必ず金融庁・各運用会社・各証券会社の最新の公式情報をご確認のうえ、ご自身の責任でお願いいたします。
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