NISA は損益通算ができない——だからクッションを厚くする

Stock Column 06 / NISA

非課税という利点の裏側に、損失が救済されないという制約がある。

NISA 口座での損失は、他の口座の利益と相殺できません。繰越控除もできません。この一点が、銘柄選びの基準そのものを変えます。

NISA の話をするとき、たいてい「利益が非課税になる」という点が強調されます。実際そのとおりで、課税口座なら約 20% 引かれる利益がまるごと残ります。

ただ、制度には裏側があります。NISA 口座で出た損失は、税務上ないものとして扱われるのです。

目次

損が「使えない」とはどういうことか

課税口座なら、ある銘柄で損が出ても、別の銘柄の利益と相殺して税金を減らせます(損益通算)。使い切れない損失は翌年以降に繰り越すこともできます(繰越控除)。損には損なりの使い道があるわけです。

NISA にはこれがありません。20 万円の利益が非課税になる代わりに、20 万円の損失はただの 20 万円の損失として残ります。他で相殺することも、翌年に持ち越すこともできない。

もう 1 つの制約非課税枠は買付額ベースで管理されます。売却した分の枠は翌年に復活しますが、その年のうちに何度も回転させることはできません。回転売買に向いた制度ではない、という前提で使う必要があります。

だから「勝率」より「負けにくさ」を優先する

Fig. 課税口座と NISA の違い 課税口座 NISA 口座 利益 → 約 20% 課税 利益 → 非課税 損失 → 他の利益と相殺できる 損失 → 相殺できない 使い切れない損失は翌年へ繰越可 繰越もできない 損が何にも変換されない = 損の出にくさを優先する理由
利益が非課税になる一方で、損失は相殺も繰越もできない。この非対称が銘柄選びの基準を変える。

この制約を踏まえると、NISA での銘柄選びは自然と保守的になります。私が安全域を厚めに取っているのも、値動きの荒い銘柄に対して要求する乖離を引き上げているのも、根っこはここです。

課税口座であれば「10 回中 7 回勝てばいい」という設計もありえます。しかし NISA では、3 回の負けが何にも変換されない。同じ期待値なら、損失の振れ幅が小さいほうを選ぶべき、という結論になります。

非課税の恩恵を最大化する近道は、大きく勝つことではなく、大きく負けないことだ。

枠を「使い切る」ことを目的にしない

もう 1 つ気をつけているのが、枠の消化を目的化しないことです。年間の枠が余っていると「使わないと損」という気分になりますが、枠を埋めるために基準を下げるのは本末転倒です。

私は年間予算を法定上限ではなく「今年これだけ使う」という自己申告額で管理しています。そのうえで、残枠は目標ではなく制約として扱う。買える上限であって、買うべき下限ではありません。

まとめ

  • NISA の損失は損益通算・繰越控除ができず、他で救済されない
  • 同じ期待値なら、損失の振れ幅が小さい設計を選ぶ
  • 安全域を厚く取る根拠は、制度側の制約にもある
  • 残枠は「買える上限」であって「買うべき下限」ではない

本記事は個人の考えと記録であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

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