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1 か月で半値以下。ただし業績見通しは営業利益 30 倍である。この二つは矛盾していない。
何が売られているのかを、セクター全体のデータと 3 つの材料に分けて整理する。決算は 7 月 31 日。結論を出すのはそのあとでいい。
7 月 28 日の終値は 44,550 円(前日比 −18.33%)でストップ安。6 月 23 日の終値 92,290 円から見れば半値以下になった。ただし業績が悪いから下げているのではない。4〜6 月期は総収入が前年同期比 5.3 倍、営業利益 30 倍の見通しと伝えられている。下げているのは「その先も続くのか」という前提のほうである。7 月 31 日に第 1 四半期決算が控えている。
何が起きたか

キオクシアホールディングス(285A)は、旧東芝の半導体メモリ事業が独立した会社である。事業はNAND 型フラッシュメモリ一本で、世界シェアはサムスン、SK ハイニックスグループに次ぐ 3 位クラスとされる。
この銘柄が 7 月 28 日、前日比 18.33% 安の 44,550 円でストップ安となった。6 月下旬には 9 万円台にあったから、1 か月あまりで半値以下である。
ここが奇妙な点 — 業績見通しは絶好調
4〜6 月期は総収入が前年同期比 5.3 倍、営業利益は 30 倍の見通し。それでも株価は半値以下になった。
普通に考えれば矛盾している。しかし矛盾ではない。株価は「業績の絶対値」ではなく「期待との差」で動くからだ。
営業利益が 30 倍になるという見通しは、すでに株価に入っている。入っているどころか、それ以上を織り込んで上がっていた可能性がある。そこから期待が剥がれれば、業績が good であっても株価は下がる。
下げを 3 つの層に分ける

第 1 層:これはキオクシアだけの話ではない
まず押さえるべきは、半導体セクター全体が同時に売られていることである。自作のスクリーナーで国内の半導体銘柄 23 社を集計すると、直近 5 営業日の騰落率は次のようになっていた。
| 銘柄 | 5 日騰落率 | RSI(14) |
|---|---|---|
| SUMCO | −19.5% | 35 |
| ディスコ | −17.9% | 33 |
| SCREEN HD | −16.5% | 38 |
| 東京エレクトロン | −16.0% | 33 |
| イビデン | −14.7% | 36 |
| ルネサスエレクトロニクス | −14.2% | 31 |
| アドバンテスト | −13.9% | 40 |
| 半導体 23 銘柄の中央値 | −5.0% | 39 |
7 月 17 日には日経平均が歴代 5 位の下げ幅を記録し、一時 4,100 円超安となった場面もあった。米国の SOX 指数(フィラデルフィア半導体株指数)が 75 日移動平均を下回ったことが波及している。
つまり1 社の問題ではなく、テーマ全体からの資金流出がまず存在する。
第 2 層:AI 投資というナラティブに亀裂
7 月 2 日の急落(一時 15% 安)のきっかけとして報じられたのが、Meta が余剰となった AI 計算資源を外部顧客へ提供する新事業を計画しているという内容だった。
これがなぜ効くのか。AI 関連株を支えていた前提は「計算資源が足りない、作れば作るだけ売れる」というものである。余剰が生じて外部に出すという話は、その前提そのものに疑問を投げかける。
個別企業の業績の話ではない。テーマの土台に対する疑いであり、だからこそ関連銘柄が一斉に反応した。
第 3 層:NAND 専業であることの増幅
ここがキオクシア固有の要因である。
同社の事業は NAND 型フラッシュメモリに集中している。HBM(広帯域メモリ)のような別領域を持たないため、NAND 市況が悪化したときに他部門で吸収できない。
そこへ韓国勢による大規模な増産計画が伝えられた。供給が増えれば市況は緩む。専業であるほど、この影響は直接的に効く。
事業が集中していることは、上げ相場では強みになり、下げ相場では弱点になる。同じ性質が両方向に働く。
7 月 31 日の決算で何を見るか
第 1 四半期の決算発表は 7 月 31 日である。今週は 29 日にアドバンテスト、30 日に東京エレクトロンと、半導体各社の決算が続く。
注意すべきは、実績の数字はおそらく良いという点だ。良い数字が出ること自体は、すでに期待されている。見るべきは別のところにある。
- 会社が示す先行きの見通し4〜6 月期の実績より、通期の見通しをどう置いてくるか。ここが期待に届くかどうかが焦点になる。
- NAND 市況と価格動向への言及韓国勢の増産をどう見ているか。市況の前提が会社側と市場側でずれていないか。
- 発表後の株価の反応好決算で上がったのか、好決算でも売られたのか。後者なら「既に織り込み済み」という回答になる。
私は決算前に手を出さない
理由は単純で、いま買うのは決算の内容に賭けることになるからだ。それは私が普段やっている手法ではない。
私の判断基準は「適正株価に対して十分な安全域があるか」である。ところがこの銘柄は適正株価の計算自体が難しい。
- 市況変動が激しく、EPS が安定しない——PER 15 倍という前提が置きにくい
- 上場から日が浅い——長期の価格履歴や業績の推移が乏しい
- 予想 EPS が実績から大きく跳ねる可能性がある——業績が 30 倍になる局面では、予想値そのものが判断材料として使いにくい
私が使っているスクリーナーの監視対象にこの銘柄が入っていないのも、同じ理由からである。測れないものを無理に測ると、数字が出てしまう分だけかえって危ない。
この下落から学べること
- 株価は業績の絶対値ではなく、期待との差で動く
- 好決算でも「既に織り込み済み」なら売られる
- テーマ全体からの資金流出は、個別企業の努力では止められない
- 事業の集中は、上げでは強みに、下げでは弱点になる
- 値幅が大きい銘柄ほど、適正株価の計算は難しくなる
- 半値になったことは、それ自体では割安の根拠にならない
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- その「割安株」、誰の EPS で計算していますか
よくある質問
- キオクシアの株価はなぜ急落したのですか?
- 半導体セクター全体の資金流出、Meta が余剰AI計算資源の外部提供を計画しているとの報道によるAI投資前提への疑い、韓国勢の大規模増産計画とNAND専業という構造の3つが重なっています。7月28日終値は前日比18.33%安の44,550円でストップ安でした。
- 業績が良いのになぜ株価が下がるのですか?
- 株価は業績の絶対値ではなく期待との差で動くためです。4〜6月期は営業利益30倍の見通しと伝えられていますが、それが既に株価に織り込まれていれば、期待が剥がれた時点で株価は下落します。
- 半値になったキオクシアは割安ですか?
- 値動きだけでは判断できません。高くなりすぎた分が戻っただけの可能性も、前提が変わった可能性もあります。市況変動が激しくEPSが安定しないため、適正株価の算出自体が難しい銘柄です。
- 7月31日の決算では何を見ればいいですか?
- 実績の数字より、通期の見通し、NAND市況への言及、そして発表後の株価の反応です。好決算でも売られた場合、その内容は既に価格に織り込まれていたという市場からの回答になります。
出典
- キオクシアホールディングスの株価に関する各種報道(2026 年 7 月 28 日終値 44,550 円、前日比 −18.33%)
- 日本経済新聞「アドバンテストの株価が急落 AI半導体株安が波及」ほか
- 株探ニュース「今週の決算発表予定 キオクシア、アドテスト、東エレクなど(7月27日〜31日)」
- 自作スクリーナー KAIRI による半導体セクターの集計(2026 年 7 月 28 日時点、23 銘柄)
本記事は公開情報にもとづく個人の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。制度・手数料・ポイント還元の条件は改定されることがあります。実際のご判断は必ず金融庁・各運用会社・各証券会社の最新の公式情報をご確認のうえ、ご自身の責任でお願いいたします。

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