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お金の勉強 / 第 9 回
成行は値段を諦める注文。指値は成立を諦める注文。
注文の種類は、性格の弱さを補うためにある。知らないまま押すと実際にお金が減るのが、この領域です。
結論
成行(なりゆき)は「いくらでもいいから売買する」注文。ほぼ確実に成立するが、いくらで成立するかは分からない。指値(さしね)は「この値段なら売買する」注文。値段は選べるが、届かなければ成立しない。確実さを取るか、値段を取るか。両方は取れない。そして逆指値は「ここまで下がったら売る」という予約で、損切りを「決意」ではなく「注文」に変えるための道具である。積立をしている人は当面使わないが、知らないまま個別株を買うと実際に損をしうるのがこの領域だ。
このシリーズは、最近 NISA を始めたばかりのわたしが、疑問をそのまま先生にぶつける形で進めます。先生は正確ですが、口は悪いです。
この記事の位置づけ注文方法の仕組みを整理する回です。特定の取引手法を推奨するものではありません。注文の種類や有効期限の扱いは証券会社によって細部が異なります。実際に使う前に、必ずご利用の証券会社の説明をご確認ください。
先生。個別株を買ってみようと注文画面を開いたら、「成行」と「指値」を選べって出てきて、そのまま閉じました。
閉じたのは正解です。ここは分からないまま押すと、実際にお金が減る場所です。
えっ、そんなに違うんですか。
まったく違います。しかも初心者ほど、危ないほうを選びがちです。
目次
① 成行と指値 — 何を諦めるかの選択


| 成行(なりゆき) | 指値(さしね) | |
|---|---|---|
| 値段の指定 | しない | する |
| 成立しやすさ | ほぼ確実に成立する | 値段が届かないと成立しない |
| 値段の確実さ | いくらになるか分からない | 指定より不利にはならない |
| 向いている場面 | どうしても今すぐ売買したいとき | 値段にこだわりたいとき |
| 注意 | 値動きが荒いと想定外の値段になる | いつまでも成立しないことがある |
成行のほうが確実なら、成行でいいんじゃないですか。
その「確実」は、成立することの確実さであって、値段の確実さではありません。
……値段、いくらになるんですか。
やってみるまで分かりません。「そのとき出ている一番近い注文」と組み合わされるので、板が薄いときや値動きが荒いときは、想定よりかなり離れた値段で成立します。
それ、こわくないですか。
こわいです。とくに寄り付き直後やストップ高・ストップ安の前後は、成行で数パーセント不利な値段を掴むことが普通にあります。
じゃあ指値のほうが安全?
値段の面では安全です。ただし別の失敗をします。いつまでも成立しない。「あと 1 円安ければ買えたのに」と言いながら、株価が上がっていくのを見ることになります。
成行は「値段を諦める」注文。指値は「成立を諦める」注文。どちらも何かを諦めている。
実務としてどう使い分けるか
- 金額の小さい売買、成立を優先したいとき——成行
- まとまった金額、値段にこだわりたいとき——指値
- 寄り付き直後・値動きが荒い場面——成行は避ける
- そもそも急いでいないなら——指値で十分
② 逆指値 — 損切りを注文に変える


「逆指値」って、指値の逆ってことですか。
名前のとおりです。指値は「安くなったら買う/高くなったら売る」。逆指値は「高くなったら買う/安くなったら売る」。
……安くなったら売る? 損するほうに売るんですか。
そうです。それが目的です。これ以上は損を広げないと決めた値段で、自動的に売るための注文です。
自分で売ればよくないですか。
それができないから、この注文があるんです。
……。
人は下がっている株を自分の手では売れません。「明日戻るかもしれない」と考えます。そして翌日もっと下がる。第 4 回でやった話です。
覚えてます。「下落時にやっていいことだけ決めておく」。
逆指値は、その決めごとを証券会社に預ける仕組みです。損切りを「決意」から「注文」に変える。これが本質です。
| 注文の種類 | いつ発動するか | 主な用途 |
|---|---|---|
| 指値(買い) | 指定した値段まで下がったら買う | 安く買いたい |
| 指値(売り) | 指定した値段まで上がったら売る | 利益を確定したい |
| 逆指値(売り) | 指定した値段まで下がったら売る | 損失を止めたい |
| 逆指値(買い) | 指定した値段まで上がったら買う | 上昇を確認してから買いたい |
逆指値にも限界がある逆指値は指定した値段に達したら注文が出る仕組みであり、その値段で必ず売れることを保証するものではありません。急落やストップ安の場面では、指定より大きく下の値段で成立することがあります。「置いておけば絶対にそこで止まる」とは考えないでください。
損切り価格から逆に株数を決める考え方は「出口を決めてから買う — 損切り価格から株数を逆算する」に書いた。
③ 板(いた)— 注文が並んでいる表
「板が薄い」ってさっき言ってましたけど、板って何ですか。
いくらで買いたい人・売りたい人が、それぞれ何株ぶん並んでいるかを示した表です。注文画面に必ず出ています。
見方が分かりません。
真ん中が現在の値段。上に売りたい人、下に買いたい人が並びます。それだけ分かれば当面は十分です。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 板 | いくらで何株の注文が出ているかを並べた表 |
| 板が厚い | 注文がたくさん並んでいる。売買しても値段が動きにくい |
| 板が薄い | 注文が少ない。少しの売買で値段が大きく動く |
| 気配値 | まだ成立していない、売り買いの希望価格 |
| 出来高 | その日に実際に売買が成立した株数 |
板が薄いと何がまずいんですか。
自分の注文で値段が動きます。買おうとした瞬間に値段が上がり、売ろうとした瞬間に下がる。
自分で自分の首を絞めてる……。
そうです。だから小型で出来高の少ない銘柄は、初心者向きではありません。「値動きが大きくて面白い」と紹介されがちですが、大きく動くのは、単に注文が少ないからです。
④ 有効期限 — 注文はいつまで生きているか
注文を出すとき、いつまで有効にするかも選ぶ。
| 選択肢 | 意味 |
|---|---|
| 当日中 | その日の取引が終わると自動的に取り消される |
| 今週中/期間指定 | 指定した期日まで有効 |
| 期間指定の注意 | 忘れたころに成立することがある |
長く出しておいたほうが便利じゃないですか。
忘れます。そして忘れたころに成立します。状況が変わっているのに、過去の自分の判断で買わされる。
あー……。
注文は出しっぱなしにせず、出したら記録しておく。これはトレードノートの役目です。
⑤ 積立をしている人は、これを使うのか
僕のつみたてNISAでは、こういう注文って出してるんですか。
出していません。投資信託は株と違って板がありません。1 日 1 回計算される基準価額で、まとめて売買されます。
じゃあ今日の話、僕には関係ない?
いま使う場面はありません。ただし「投資信託には成行も指値もない」と知っていること自体に意味があります。
どういうことですか。
「今日の安値で買えた」みたいな話は、あなたには最初から存在しないということです。タイミングを気にしても意味がない。そう分かっていれば、値動きのニュースに反応しなくなります。
……なんか、また積立を続ける話に戻ってきましたね。
毎回そこに戻ります。私が飽きっぽくないだけです。
今日のまとめ
- 成行=値段を指定しない。ほぼ成立するが、いくらになるか分からない
- 指値=値段を指定する。不利にはならないが、成立しないことがある
- 寄り付き直後や値動きの荒い場面で成行を使わない
- 逆指値=「ここまで下がったら売る」の予約。損切りを決意から注文に変える道具
- ただし逆指値も、その値段で売れる保証はない
- 板=注文が並んだ表。薄いと自分の注文で値段が動く
- 出来高の少ない銘柄で成行を出すのが、もっとも避けたい組み合わせ
- 注文の有効期限を長く置くと、忘れたころに成立する
- 投資信託には板も成行も指値もない。タイミングを気にする意味がない
注文の種類は、性格の弱さを補うためにある。成行は迷いを、指値は焦りを、逆指値は「もう少し待とう」を、それぞれ機械に肩代わりさせる仕組みである。
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よくある質問
- 成行注文と指値注文の違いは何ですか?
- 成行は値段を指定しない注文で、ほぼ確実に売買が成立しますが、いくらで成立するかは注文時点では分かりません。指値は値段を指定する注文で、指定より不利な値段では成立しない代わりに、値段が届かなければいつまでも成立しません。確実さを取るか値段を取るかの違いです。
- 初心者は成行と指値のどちらを使うべきですか?
- 急いでいないのであれば指値で十分です。とくに寄り付き直後やストップ高・ストップ安の前後、出来高の少ない銘柄では、成行注文は想定より不利な値段で成立しやすくなります。
- 逆指値注文とは何ですか?
- 「指定した値段まで下がったら売る」「上がったら買う」という注文です。売りの逆指値はストップロス注文とも呼ばれ、損失がこれ以上広がらないよう、あらかじめ売る値段を決めておくために使います。損切りを自分の決意ではなく注文として仕組み化する道具です。
- 逆指値を置けば必ずその値段で売れますか?
- 売れるとは限りません。逆指値は指定した値段に達したときに注文が出る仕組みであり、約定価格を保証するものではありません。急落やストップ安の場面では、指定した値段より大きく下回った価格で成立することがあります。
- 板が薄いとはどういう意味ですか?
- 売り注文と買い注文の数量が少ない状態を指します。板が薄い銘柄では、少しの売買でも株価が大きく動くため、自分の注文自体が値段を不利な方向へ動かしてしまいます。出来高の少ない銘柄で成行注文を出すのは避けたい組み合わせです。
- 投資信託でも成行や指値は使えますか?
- 使えません。投資信託には株式のような板がなく、1日1回算出される基準価額でまとめて売買されます。そのため「今日の安値で買う」といったタイミングの概念が存在せず、注文方法を選ぶ場面もありません。
本記事は公開情報にもとづく個人の解説であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。制度・手数料・ポイント還元の条件は改定されることがあります。実際のご判断は必ず金融庁・各運用会社・各証券会社の最新の公式情報をご確認のうえ、ご自身の責任でお願いいたします。









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