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「円安が止まらない」と言われていましたが、9月に入ってから起きているのは円高です。
6営業日で6円18銭。賃金統計と米財務長官の一言が重なった週を、数字で追います。
ドル円は9月1日の159.99円から、9月8日の153.81円まで6円18銭下げました(日本銀行の17時時点。率にして3.86%の円高)。9月9日の午前も153円台で推移しています。
直接の引き金は9月8日に公表された7月の毎月勤労統計です。実質賃金が+2.4%で7か月連続のプラスとなり、日銀の利上げ観測が強まりました。
もうひとつがベッセント米財務長官の発言です。円買いを牽制する側ではなく、円売りを仕掛ける側に警告する形になっており、ドルを買い上がりにくい地合いが続いています。

まず用語 — 「ドル円が下がる」は円高
数字が小さくなるので「下落」と表現されますが、下がっているのはドル円という為替レートであって、円ではありません。
| 表現 | 意味 | 2026年9月は |
|---|---|---|
| ドル円が下落 | 1ドルで買える円が減る=円高 | これが起きている(159.99 → 153.81) |
| 円安 | 円の価値が下がる=ドル円は上昇 | 起きていない(8月まではこちらだった) |
数字で追う — 6営業日の推移
| 日付 | 17時時点 | 前営業日比 | その日のレンジ |
|---|---|---|---|
| 9月1日(火) | 159.98-00 | — | 159.64 〜 160.02 |
| 9月2日(水) | 159.69-71 | −0.29 | 159.44 〜 160.39 |
| 9月3日(木) | 157.03-06 | −2.66 | 156.36 〜 158.96 |
| 9月4日(金) | 156.29-30 | −0.75 | 155.30 〜 156.45 |
| 9月7日(月) | 155.55-56 | −0.75 | 155.53 〜 156.26 |
| 9月8日(火) | 153.80-82 | −1.75 | 152.90 〜 154.36 |
注目すべきは戻りが小さいことです。6営業日のうち上昇して終えた日がありません。一時的な調整ではなく、方向が変わったときの動き方をしています。
引き金① 賃金統計 — 実質賃金が7か月連続プラス
9月8日に厚生労働省が公表した7月分の毎月勤労統計が、この日の円買いの直接のきっかけになりました。
| 項目 | 2026年7月 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 現金給与総額 | 436,401円 | +4.7% |
| 所定内給与 | 280,797円 | +4.1% |
| 特別に支払われた給与 | 134,819円 | +6.3% |
| 実質賃金指数 | 117.6 | +2.4%(7か月連続プラス) |
現金給与総額が3%以上の伸びを続けるのは6か月連続で、これは34年4か月ぶりのことです。所定内給与——つまり残業代や賞与を除いた、毎月決まって支払われる部分——も7か月連続で3%以上伸びています。

引き金② 米財務長官の発言
もうひとつ効いているのが、ベッセント米財務長官の発言です。報道によれば「円相場で私に反して賭けてみよ」という趣旨の警告を出しています。
これは円売りを仕掛ける投機筋に対する牽制です。通常、通貨当局の警告は自国通貨安を止めるために出ますが、今回は米国側から円安に釘を刺している形になっています。
背景には、8月30日の日米財務相会談があります。米財務省が公表した記録に「円の大幅な過小評価に対処するための日本の措置を強く支持する」と明記されていました。この件は1日で4円の円高に詳しく書いています。
通貨当局が「安すぎる」と公式文書に書いた通貨を、売り続けるのは分が悪い。
株と金利はどう動いたか
円高が進むと、輸出企業の採算が悪化するため株価には逆風になります。ただし今回は、金利の低下がそれを一部相殺しています。
| 9月2日 | 9月8日 | 変化 | |
|---|---|---|---|
| ドル円(17時) | 159.70 | 153.81 | −5.89円 |
| 日経平均(終値) | 64,325.64 | 65,269.33 | +943.69 |
| 10年国債 | 3.006% | 2.896% | −0.110%pt |
| 30年国債 | 4.122% | 3.961% | −0.161%pt |
9月2日に10年国債が3.006%をつけたのはおよそ30年ぶりでしたが、そこから0.11%ポイント下がっています。金利が下がって円が買われるのは一見ちぐはぐですが、長期金利の低下は債券が買われた結果で、為替を動かしているのは短期金利の先行き(=利上げ観測)です。
家計への影響
円高は輸入品の値段を下げる方向に働きますが、店頭価格に届くまでには時間がかかります。
| 項目 | 円高の影響 | 効いてくるまで |
|---|---|---|
| 輸入食品・日用品 | 仕入れ値が下がる | 3〜6か月。契約レートが順に切り替わるため |
| ガソリン・電気代 | 原油の輸入コストが下がる | 1〜2か月。ただし原油価格自体が上がると相殺される |
| 海外旅行 | すぐ効く | 両替した日のレートがそのまま |
| 外貨建ての資産 | 円換算では目減り | 即日。外国株の投資信託は基準価額に反映される |
| 輸出企業の株 | 採算が悪化 | 決算発表で数字として出てくる |
では何をすればいいか
| よくある反応 | 実際 | すること |
|---|---|---|
| 円高だから外貨を買う | 6営業日で6円動いた直後は、方向を当てにいく場面ではない | 積立は止めない。タイミングを計る判断を増やさない |
| 外国株の投信が下がったから売る | 円換算で目減りしているだけで、現地の株価は別 | 基準価額の下落が為替なのか株価なのかを分けて見る |
| 円高が続くと決めつける | 8月まで円安だったものが1週間で反転した。逆も起きる | 為替ヘッジのありなしを決めているなら、それを変えない |
| 旅行の両替を待つ | これは合理的。両替はレートがそのまま効く | 使う日が決まっているなら、分割して両替する |
- 2026年9月はなぜ円高になったのですか
主な理由は2つです。9月8日公表の7月の毎月勤労統計で実質賃金が+2.4%と7か月連続プラスになり、日銀の利上げ観測が強まったこと。もうひとつは米財務長官が円売りを牽制する発言をしたことです。背景には8月30日の日米財務相会談で、米側が「円の大幅な過小評価」に言及したことがあります。
- 円安はもう終わったのですか
わかりません。この記事は起きたことを記録するもので、予想はしません。ただし事実として、8月まで160円近辺だったものが6営業日で153円台まで動いたことは記録しておきます。同じ速さで戻ることもありえます。
- いまドル円はいくらですか
日本銀行の公表値で、9月8日の17時時点が153.80-82円です。同日のレンジは152.90〜154.36円でした。9月9日の午前も153円台で推移しています。
- 円高になると生活はどう変わりますか
すぐ効くのは海外旅行の両替と外貨建て資産の円換算額です。輸入品の店頭価格に届くには3〜6か月かかります。また原油価格が上がっていると、円高でも燃料費は下がりません。
- 積立投資はどうすればいいですか
変えないのが基本です。為替が6営業日で4%近く動いた直後は、方向を当てにいく場面ではありません。外国株の投資信託を持っている場合、基準価額の下落が為替によるものか株価によるものかを分けて確認してください。
- 実質賃金がプラスだと、なぜ円が買われるのですか
物価を差し引いても賃金が増えている状態が続くと、日銀が利上げを進めやすくなります。金利が上がる見通しの通貨は、持っているだけで得られる利息が増えるため買われます。為替を動かしているのは短期金利の先行きです。

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