読了時間の目安約 8 分3,609 字
8月21日に公表される7月分から、消費者物価指数は「2020年基準」から「2025年基準」に切り替わる。
採用する品目と、それぞれの重みが入れ替わる。過去の数字もさかのぼって改定される。
つまり、この日の前年比は前の月と単純には比べられない。数字が動いても、それが物価の変化なのか基準の入れ替えなのかを分けて読む必要がある。
毎月の消費者物価指数(CPI)は、たいてい「前年同月比が何%上がったか」だけが報じられます。ただ8月21日の公表は事情が違います。指数の土台そのものが入れ替わる日だからです。
切り替え前の数字(2020年基準・2026年6月分)
切り替え前の最後の数字は、7月24日に公表された6月分です。
総合が113.6ということは、2020年に100円だったものが平均で113.6円になった、という意味です。前年同月比は総合+1.7%、生鮮食品を除く総合(コア)+1.6%、生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコア)+1.7%。前月比(季節調整値)はそれぞれ+0.3%、+0.2%、+0.2%でした。
コアとコアコアの違い — どれを見ればいいか
消費者物価指数には3つの出し方があります。何を除くかで名前が変わるだけで、 測っているものは同じです。ニュースで「物価が何%上がった」と言うとき、 どれを指しているかで数字が変わります。
| 呼び方 | 公式の名称 | 除くもの | 使われる場面 |
|---|---|---|---|
| 総合 | 総合 | 何も除かない | 生活実感にいちばん近い |
| コア | 生鮮食品を除く総合 | 生鮮食品 | 日銀が物価目標で見るのはこれ。報道の「物価上昇率」も通常これ |
| コアコア | 生鮮食品及びエネルギーを除く総合 | 生鮮食品+エネルギー | 原油価格の影響を除いて、国内の需要による物価を見るとき |
使い分けの目安はこうです。自分の家計の感覚と比べるなら総合、 日銀が動くかどうかを見るならコア、 値上がりの原因が国内にあるのか海外にあるのかを分けたいならコアコア。 コアだけが上がってコアコアが横ばいなら、原因はエネルギー価格にあります。
いまの数字(2025年基準・2026年7月分)
2026年8月21日に公表された、2025年基準での最新の数字です。 3つの指数がほぼ同じ水準に並んだのが、いまの局面の特徴です。
| 指数 | 指数値 | 前年同月比 | 前月比(季節調整値) |
|---|---|---|---|
| 総合 | 102.0 | +1.9% | +0.4% |
| コア 生鮮食品を除く総合 |
102.1 | +1.8% | +0.3% |
| コアコア 生鮮食品及びエネルギーを除く総合 |
102.1 | +1.9% | +0.3% |
読み取れることは2つあります。ひとつは1年でおよそ1%ポイント下がったこと。 もうひとつは、コアコアが下がってきて3本が並んだことです。
2025年の後半は、コアコアだけが上に離れていました。 エネルギーを除いても物価が上がっていた、つまり値上がりの原因が海外要因だけではなかったことを意味します。 それが解消されたのが、この1年の変化です。
いつ発表されるか
全国の消費者物価指数は毎月19日を含む週の金曜日に、 前月分が公表されます。おおむね翌月の下旬です。 東京都区部の速報はそれより約3週間早く出るので、 先行指標として見られることがあります。
「基準改定」とは何をするのか

CPIは「家計が何にいくら使っているか」を重みにして計算します。その重みは5年ごとに作り直されます。今回はその年で、2020年の買い方をもとにした計算から、2025年の買い方をもとにした計算へ移ります。
| 変わるもの | 中身 |
|---|---|
| 採用品目 | 売れなくなったものが外れ、新しく普及したものが入る |
| ウエイト(重み) | 家計の支出割合に合わせて配分をやり直す |
| 指数の基準年 | 2020年=100 から 2025年=100 へ |
| 過去の数値 | さかのぼって新基準で計算し直される |
数字が変わったのか、物差しが変わったのか。基準改定の月は、その二つを混ぜて読むと必ず間違える。
当日、どこを見るか
新基準では2025年=100になります。前年比だけを見て「上がった/下がった」と判断せず、指数そのものの動きを見ます。
コア(生鮮食品を除く)とコアコア(生鮮食品・エネルギーを除く)の差は、エネルギー価格がどれだけ効いているかを表します。差が縮んでいれば、値上がりの理由が食品やサービスに移っています。
前年比は1年前の水準に引きずられます。足元の勢いを見るなら前月比のほうが素直です。
公表資料には新基準で計算し直した過去の数字が載ります。比べるなら、そちらと比べます。
家計にとって、何が変わるか
結論から言えば、生活は何も変わりません。物価そのものが動くわけではなく、測り方が変わるだけです。
ただ、CPIは年金の改定や賃金交渉、日銀の判断の材料になります。測り方が変われば、それらの前提に使われる数字も変わります。「1.7%上がった」という数字を根拠に何かを判断している人にとっては、根拠のほうが更新される、ということです。
- 消費者物価指数の基準改定とは何ですか?
指数を計算するときの基準年と、品目ごとの重み(ウエイト)を作り直すことです。5年ごとに行われ、2026年7月分から2020年基準が2025年基準に切り替わります。
- 基準が変わると、物価が上がったり下がったりするのですか?
いいえ。実際の物価が動くわけではありません。測り方が変わるだけです。ただし計算方法が変わるため、公表される前年比の数値はこれまでと少しずれることがあります。
- コアとコアコアの違いは何ですか?
コアは生鮮食品を除いた総合指数、コアコアは生鮮食品とエネルギーを除いた総合指数です。生鮮食品は天候で、エネルギーは原油価格や為替で大きく動くため、これらを除いて基調を見ます。
- 7月分はいつ公表されますか?
2026年8月21日です。総務省統計局のサイトで公表されます。
- コアとコアコア、どちらを見ればいいですか
目的で変わります。自分の家計の感覚と比べるなら総合、日銀が動くかを見るならコア、値上がりの原因が国内か海外かを分けたいならコアコアです。ニュースが「物価上昇率」とだけ言っているときは、通常コアを指しています。
- なぜ「コアコア」という変な名前なのですか
英語の core(中核)から、変動の大きい生鮮食品を除いたものをコア指数と呼びます。そこからさらにエネルギーも除いたものを、日本では慣用的に「コアコア」と呼びます。総務省の公式名称は「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」で、統計局では参考値として公表されています。
- 海外の「コア」と日本の「コア」は同じですか
違います。アメリカのコアCPIは食品とエネルギーの両方を除きます。日本のコアは生鮮食品だけを除くので、概念としては日本の「コアコア」がアメリカの「コア」に近くなります。
- いつ発表されますか
全国の結果は毎月19日を含む週の金曜日に前月分が公表されます。おおむね翌月の下旬です。東京都区部の速報は約3週間早く出ます。
- 指数が100を超えているのはどういう意味ですか
基準年を100とした相対値です。2025年基準なら、2025年の平均を100として、いまがいくつかを表します。102.0なら、2025年に100円だったものが平均で102円になった、ということです。
- 基準改定があると、過去の数字と比べられなくなりますか
水準の単純比較はできなくなります。基準年が変わると指数値そのものが変わるためです。ただし前年同月比は接続して見られるように公表されます。水準ではなく変化率で追うのが安全です。

コメント