額面と手取りはなぜ違うのか — 年収別の早見表と手取り計算機

額面と手取りはなぜ違うのか — 給与明細から読み解く社会保険料と税

読了時間の目安約 10 分4,616 字

お金の基礎 01 / 給与の構造

額面と手取りの差は「引かれている」のではなく、4つの制度が同時に動いた結果です。

何がいくら引かれているのか。年収別の手取り早見表と、自分の年収を入れて計算できるツールを置きました。

結論

額面から引かれるのは 健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・所得税・住民税。ざっくり額面の 2〜3割が引かれ、年収が上がるほどこの割合は増えます。

目安として、年収300万円なら手取りは約80%、年収500万円で約78%、年収1,000万円で約73%。「年収の8割」という感覚は、年収が上がるほど外れていきます。

いちばん引かれているのは税金ではなく社会保険料です。年収500万円クラスだと、社会保険料は所得税の3倍以上あります。

目次

自分の場合はいくらか — 手取り計算機

年収を動かすと、引かれる内訳と手取りが出ます。東京都・協会けんぽの令和8年度の料率、令和8年分の所得税・住民税で計算しています。

年齢
引かれる額(年)
手取り(月あたり)
手取り(年)
手取り社会保険料税金
内訳(年額)
額面総支給額
健康保険料
厚生年金保険料
雇用保険料額面の 0.5%(労働者負担分)
所得税
住民税
手取り

※ 概算です。東京都・協会けんぽ(令和8年度)の料率、一般の事業の雇用保険料率、令和8年分の所得税・住民税で計算しています。配偶者控除・扶養控除・生命保険料控除・iDeCo住宅ローン控除・住民税の調整控除は含めていません。これらがある場合、実際の手取りはこれより多くなります。賞与も月給と同じ料率で近似しているため、賞与の比率が高い場合は誤差が出ます。

style script
この計算機は配偶者控除・扶養控除・生命保険料控除・iDeCo・住宅ローン控除を含めていません。これらがある人の実際の手取りは、表示される金額より多くなります。逆に言えば、ここに出る数字は「控除が基礎控除だけの場合」の下限に近い値です。

年収別の手取り早見表

計算機と同じ条件(東京都・40歳未満・扶養なし)で並べたものです。

額面の年収社会保険料所得税+住民税手取り(年)手取り(月)手取り率
300万円約 44万円約 16万円約 240万円約 20.0万円80.1%
400万円約 59万円約 25万円約 317万円約 26.4万円79.2%
500万円約 73万円約 36万円約 390万円約 32.5万円78.0%
600万円約 88万円約 50万円約 462万円約 38.5万円77.0%
800万円約 116万円約 90万円約 594万円約 49.5万円74.3%
1,000万円約 127万円約 147万円約 726万円約 60.5万円72.6%
1,500万円約 154万円約 323万円約 1,023万円約 85.3万円68.2%
東京都・協会けんぽ(令和8年度)・40歳未満・基礎控除のみで計算した概算。扶養や各種控除があれば手取りは増える
figcaption
年収が5倍になっても、手取りは4倍にしかならない。この差が「働いても楽にならない」という感覚の正体になっている。
Fig. 額面給与から手取りまで額面給与から手取りまでの流れ|健康保険料・厚生年金保険料・所得税・住民税の4項目が控除される
控除される4項目。性格が異なるため、それぞれ別に理解する必要がある。
figcaption

何がいくら引かれているのか

健康保険料 — 額面の約5%(本人負担分)

協会けんぽ(東京都)の令和8年度の料率は 9.85%。これを会社と本人で折半するので、本人が払うのは約4.93%です。これに子ども・子育て支援金 0.23%(折半で0.115%)が加わります。

40歳になると介護保険料が加わり、料率は 11.47% に上がります(本人負担 約5.74%)。満40歳に達した日(誕生日の前日)が属する月から自動的に引かれ始めるので、「40歳になったら手取りが少し減った」というのはこれが原因です。

健康保険料率は都道府県によって違います(協会けんぽの場合)。同じ年収でも、住む場所というより勤務先の所在地によって数千円の差が出ます。大企業の健康保険組合はまた別の料率です。

厚生年金保険料 — 額面の9.15%(本人負担分)

料率は 18.300% で固定されています(2017年9月以降)。労使折半なので本人負担は 9.15%。4つの控除のなかで、金額としてはこれが最大です。

重要なのは上限があることです。厚生年金の計算に使う標準報酬月額は 65万円が上限で、それ以上いくら稼いでも保険料は増えません(月額 約5.9万円で頭打ち)。年収が高いほど手取り率の下がり方が緩やかになるのは、この上限のおかげです。

雇用保険料 — 額面の0.5%

令和8年度(2026年4月〜2027年3月)の労働者負担は 5/1,000=0.5%です(一般の事業)。金額としては小さいですが、賞与を含む賃金総額にかかる点が他と違います。

所得税 — 今年の所得に対して

所得税は当年の所得に対して課され、毎月の給与から概算で天引きされます。年末調整は、この概算と確定額の差を精算する手続きです。

計算の順番は「額面 − 給与所得控除 − 社会保険料 − 基礎控除など = 課税所得」で、そこに5%〜45%の累進税率をかけ、さらに復興特別所得税2.1%を上乗せします。社会保険料は全額が控除されるので、社会保険料をたくさん払っている人ほど所得税は軽くなります。

住民税 — 前年の所得に対して

ここがいちばん見落とされます。住民税は前年1月〜12月の所得を基準に計算され、翌年6月から翌々年5月にかけて徴収されます。税率は所得割10%で一律、これに均等割5,000円(森林環境税1,000円を含む)が加わります。

収入が大きく減った年、あるいは退職した年の翌年も、前年の高い所得を基準にした住民税が請求されます。新社会人の2年目に手取りが減ったように感じるのも、1年目は前年所得がなく住民税がゼロだったからです。

会社は、あなたの額面より多く払っている

明細に載っているのは本人負担分だけですが、健康保険料と厚生年金保険料は会社が同額を負担しています。つまり会社から見た人件費は、額面より約15%多いということです。

年収500万円の人にかかっているお金金額(概算)
本人が受け取る額面500万円
会社が負担する社会保険料(本人負担分と同額+子ども・子育て拠出金など)約 75万円
会社から見た人件費約 575万円
本人の手取り約 390万円
575万円かかっているうち、本人の手元に残るのは約390万円
figcaption

この差は、独立やフリーランスを検討するときに効いてきます。国民健康保険と国民年金は全額自己負担なので、「額面と同じ売上があれば同じ生活ができる」とはなりません。

年収が上がっても手取りが比例して増えない理由

理由は2つあります。所得税の累進社会保険料の増加です。年収600万円の人が100万円昇給しても、手取りで増えるのは約68万円。増えた分の3割強は消えます。

ただし、上がり続けるわけでもありません。厚生年金の標準報酬月額は65万円で頭打ちになるので、年収800万円を超えたあたりから社会保険料の増え方は鈍ります。計算機の下に出る「あと100万円増えたら手取りはいくら増えるか」で、この変化を確認できます。

家計設計への応用

原則理由
額面ではなく手取りで予算を組む生活費も積立額も、手取りを基準に設計します。額面で計算すると常に足りなくなります。
賞与を固定費の前提に入れない賞与は業績で変動し、社会保険料もかかります。固定費や積立の前提に組み込むと、支給額が減った年に破綻します。
退職・転職の年は住民税を別枠で確保する前年基準の住民税は、収入が途切れても請求されます。転職の空白期間がある場合はとくに、この分を現金で持っておいてください。
40歳の年は手取りが減る前提でおく介護保険料が加わり、健康保険料率が9.85%→11.47%になります。
控除できるものは全部使うiDeCoの掛金は全額所得控除、生命保険料控除、ふるさと納税。社会保険料は動かせませんが、税金の部分は自分で減らせます。

関連記事

よくある質問

額面と手取りの違いは何ですか?

額面は総支給額、手取りは実際に振り込まれる金額です。差になるのは健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料・所得税・住民税の5項目で、ざっくり額面の2〜3割が引かれます。年収が上がるほどこの割合は大きくなります。

年収500万円の手取りはいくらですか?

東京都・40歳未満・扶養なしの概算で、手取りは年約390万円(月約32.5万円)、額面の約78.0%です。内訳は社会保険料が約73万円、所得税と住民税が約36万円。扶養家族や生命保険料控除、iDeCoなどがあればこれより手取りは増えます。

手取りは額面の何割ですか?

年収300万円で約80%、500万円で約78%、800万円で約74%、1,000万円で約73%が目安です。「額面の8割」という感覚は年収500万円あたりまでで、それ以上では合わなくなります。

住民税はなぜ前年の所得で計算されるのですか?

住民税は前年1月から12月の所得を基準に税額が決まり、翌年6月から徴収が始まる仕組みだからです。このため収入が減った翌年も、前年基準の税額が請求されます。

社会保険料は会社も払っているのですか?

健康保険料と厚生年金保険料は労使折半です。給与明細に記載されているのは本人負担分のみで、同額を会社が負担しています。年収500万円なら、会社から見た人件費は約575万円になります。

新社会人2年目に手取りが減るのはなぜですか?

住民税の徴収が始まるためです。1年目は前年の所得がないため住民税がかからず、2年目の6月から課税が始まります。

40歳になると手取りが減るのはなぜですか?

介護保険料が加わるためです。協会けんぽ東京の場合、健康保険料率が9.85%から11.47%になり、本人負担は約4.93%から約5.74%に上がります。誕生日の前日が属する月から対象になります。

年収が上がっても手取りが増えないのはなぜですか?

所得税が累進課税であることと、社会保険料が報酬に比例して増えることの2つが理由です。ただし厚生年金の標準報酬月額は65万円で上限に達するため、年収800万円を超えたあたりから社会保険料の増え方は鈍くなります。

script

本記事および計算ツールは公開情報にもとづく個人の解説であり、算出される金額は概算です。健康保険料率は都道府県および健康保険組合によって異なり、各種の所得控除・税額控除は反映していません。正確な金額は勤務先の給与担当部署、または所轄の税務署・市区町村にご確認ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

自作の株価スクリーナー「KAIRI」の検証と、WordPress サイトの制作をしています。数字は IR・官公庁・取引所の一次情報で裏を取り、自分のツールが出した答えも疑ってから記事にしています。間違いに気づいたときは、記事の中で訂正します。

コメント

コメントする

目次